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by chirimendonnya
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『蒼穹の昴』3,4  浅田 次郎  講談社文庫

さて、昨日の続きです。

あらすじ:
高級官僚となった文秀は順調に出世を重ね、皇帝の側近として重用される。一方、春児は何人もの師匠に仕込まれた数々の技能と自らの才覚を評価され、西太后のおそば近くに仕えるようになる。改革派と守旧派が激しくぶつかる宮廷で、それぞれ重要なポジションにある二人は、もはや昔のように語り合うことはない。列強各国の陰謀の舞台になり、情勢が緊迫していく中で、ついに大事件が起こる。さて二人の運命はいかに。

二巻の後半から、女傑・西太后が本格的にストーリーに絡んでくるようになりました。悪女というイメージを覆そうという試みがなされ、それはある程度成功しています。以外に普通のおばさんで、なおかつ器量の大きさ、すさまじい吸引力を感じさせる人物に仕上がっていて、だからこそ一時は皇帝にまでなったのか、と何となく納得してしまいました。

ただ、残念なのはこの辺りからあれこれとエピソードと登場人物を詰め込みすぎて、前半のスケール感や活気がかえって失われていることです。話の都合上無駄ではないというのはわかるけど、メインではないものにもかなりの部分がさかれた結果、焦点がぼけてしまいました。せっかくそれぞれ個性の違ういい主人公が二人いるのだから、もっと彼らだけの話に絞った方がよかったと思います。

中でも、ラストがあまりにも中途半端なので、そこだけでももう少し何とかならなかったのか、と強く感じました。確かに勝者と敗者ははっきりとしていますが、どちらの側のエピソードも後もう一つです。どちらも時間切れで打ちきりになったような感じの唐突な最後で、何のカタルシスも得られませんでした。ここだけでももう少しページ数をかけて、きれいに終わらせて欲しかったと思います。

と、後半の感想は何だか不満だらけになってしまいましたが、読んで損ということはなかったです。ごちゃごちゃしてわかりづらい時代が生き生きと描写され、どんな時代だったか理解でき、身近に感じさせてくれました。数多い登場人物の個性がきっちりかき分けられ、そういう部分からも作者の技量を感じさせてくれる作品です。
by chirimendonnya | 2004-12-11 18:55 | 小説