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by chirimendonnya
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『神秘の探検』上下 フィリップ・プルマン 新潮文庫

「ライラの冒険」の2作目、『黄金の羅針盤』の続編です。

あらすじ:
ある理由で警察に追われることになった少年ウィルは、心を病んでいる母親を知り合いの女性に預け、逃亡生活を送る。そして、謎の別世界に迷い込んだ彼は、そこで自分より少し年下の少女ライラと出会う。昔の人のようなことをいうライラは、ウィルの住む世界とも違う別の所からやってきたらしい。そして、ダイモンという変わった動物を持っている。お互いの背景や考えに戸惑いつつも、二人は共に行動することになる。

第2の主人公ウィルの登場で、物語のバランスがぐっとよくなりました。二人を並列して活躍させているので、前作ほどライラ、ライラとなることがありません。それに、かなり価値観や考え方が違うウィルと時々衝突することで、彼女自身も成長し、より魅力ある人物になっています。良い子ではないけれど冷静で行動力があるウィルは、冒険の相棒として丁度良いと思います。ストーリー自体も、ライラの持つ真理計に加え、ウィルが使い手となる短剣を巡り、追いつ追われつのスピーディな展開で目が離せません。

今回は、主に私たちの住む世界で話が展開しています。最初の出版から約10年経っているので、微妙な古さを感じる部分があるにしても、自動車が走る現代的な世界です。『黄金の羅針盤』を読んでいるとき、登場人物の発想や社交界がかなり古くさい物に思えました。特に「神」を過剰に意識するのは、それだけ強く信仰が人々の間に根付いているからこそ、だとも感じました。今回のウィルとライラの会話で、やはりライラの世界は50年、100年前の社会をモデルにしていることを強く感じました。例えば、こんな具合です。「女の子がズボンをはくなんてとんでもない」、「料理は使用人がするものよ」。ウィルが戸惑うのも無理はありません。

『黄金の羅針盤』では、子供をさらうゴブラーという集団が登場しました。今度は二人が迷い込んだ世界で大人を襲うスペクターという存在が登場します。そこに深く関わるのは、やはりダスト。この巻では、ダストについてかなり詳しく語られます。そして、どのように決着するか強い興味を持たせながら、次へと続きます。
by chirimendonnya | 2005-04-02 15:50 | ファンタジー