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by chirimendonnya
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『図書館の神様』瀬尾 まいこ  マガジンハウス

あらすじ:
高3の時のある事件をきっかけにどこまでも後ろ向きな人生を送ってきた清。大学を卒業した彼女は、講師として「どこからでも海の見える高校」に赴任。希望もしていない文芸部の顧問になって、ますますやる気をなくす清。しかし、唯一の部員・垣内君は文学に燃えている。その彼との会話を通して段々変わっていく。

もう、途中までは後ろ向きな主人公にイライラしっぱなし。仕事への意欲も文学部を選んだ理由もいいかげん。こんな先生に教わりたくない、と、思ってしまいました。でも、読んでいる内にこういう変な色気のない人の方が、段々いい教師になっていくかも、という気がしてきました。なにしろ、彼女には他人があまり体験しないことを乗り越えてきたわけだし、1年の講師生活で大分変わったと思うので。最後の場面、清の誠実さが報われる場面があり、一つ荷物が下ろせたことでしょう。これをきっかけに、素敵な人生を送ってくれることを祈ります。

そんな彼女の恋愛は恋愛のいいとこだけ味わっているけど、不倫なのでかなり罪悪感を伴っています。不倫相手の男性は、清が惹かれる理由もわかる、まあまあ素敵な男性。でも、彼の態度は奥さんに対しても清に対しても大変不誠実に感じました。両方のいいとこ取り、都合が悪くなったら冷たくなるというのはいただけません。清ばかり苦しんでる気がして、フェアじゃないです。結局は彼女が一歩踏み出すきっかけの一つになってるので、そういう意味ではいいと思いますが。

唯一の文学部員・垣内君はちょっとかわってるけど、ナイスガイ。彼の文学談義は面白いです。私の中では「文芸部=帰宅部」でしたが、こういう活動をする部活だったら、入ってみたかったです。清も部活の時はすごく生き生きしていて、好きでした。彼を見てると、文学って本当にいいものなんだと思えます。特に最後の方の見せ場は必見です。

大きな出来事が起こるわけではないけど、細かいところが良くできていてすんなり読めました。最後、ちょっとじーんとします。昨日の『卵の緒』と併せて、気になる作家になりました。
by chirimendonnya | 2005-08-07 11:16 | 小説