『ナターシャ』デイビッド・デズモーズギス 新潮クレストブックス
2005年 10月 16日
旧ソ連のラトビアからカナダに移民してきたユダヤ人一家と周りの人々(主に同じ移民ユダヤ人)をめぐる物語。七つの短編からなり、第1話から最終話までが時系列順に並んでいて、読者側も生活を共にしているような感覚になります。
主人公(第1話ではほんの子供)の男性の父は、若い頃は相当強いレスリング選手で、その昔は故郷ラトビアでよい暮らしをしていたときもあったようです。それだけに、カナダでの困窮生活を見ていると、本当に移民してきたことって幸せだったんだろうかと思うことが時々ありました。その一方でユダヤ人であることは日本人の私が思う以上に大変なことだということを何度となく感じました。悲しいことですが、このようなデリケートな問題はなかなか簡単には決着がつかず、当事者にはやりきれないことも多いと思います。
戸惑うこともある大人達に対して幼くしてやってきた主人公はスムーズに現地になじんでいきます。成長するにつれ、クスリに手を出したりする怠惰な生活を送るようになったのは何とも複雑な気分です。ただ、こういう風になると親より恋人だったり都会へ出てもっと自由な暮らしを送ったりしそうなところが、そうでないところにかえって新鮮さを感じました。つれて逃げてと願うような恋人には腰抜け男に映るかもしれないけど、一貫して家族を思い信仰を大事にする彼は好感が持てます。迷った末にそうすった決断をする経過の描写がうまいせいか、いつの間にか応援しながら読んでいました。
人種的なことだけではなく、移民の悲しさ、人間関係の難しさなど暗い部分も丹念に描写され、非常にリアルに感じました。特に最終話の安く入居できる共同住宅に住む権利を人々が争う話は、とても世知辛く感じました。みんな大変なのは一緒でもそこに住んでいた年寄りを強引に追い出そうという展開に何とも暗い気持ちを覚えます。最終話なのに・・・と寂しく思っていたら、はっきりとした決着はつけないまでも希望を感じさせる終わり方で安心しました。
主人公(第1話ではほんの子供)の男性の父は、若い頃は相当強いレスリング選手で、その昔は故郷ラトビアでよい暮らしをしていたときもあったようです。それだけに、カナダでの困窮生活を見ていると、本当に移民してきたことって幸せだったんだろうかと思うことが時々ありました。その一方でユダヤ人であることは日本人の私が思う以上に大変なことだということを何度となく感じました。悲しいことですが、このようなデリケートな問題はなかなか簡単には決着がつかず、当事者にはやりきれないことも多いと思います。
戸惑うこともある大人達に対して幼くしてやってきた主人公はスムーズに現地になじんでいきます。成長するにつれ、クスリに手を出したりする怠惰な生活を送るようになったのは何とも複雑な気分です。ただ、こういう風になると親より恋人だったり都会へ出てもっと自由な暮らしを送ったりしそうなところが、そうでないところにかえって新鮮さを感じました。つれて逃げてと願うような恋人には腰抜け男に映るかもしれないけど、一貫して家族を思い信仰を大事にする彼は好感が持てます。迷った末にそうすった決断をする経過の描写がうまいせいか、いつの間にか応援しながら読んでいました。
人種的なことだけではなく、移民の悲しさ、人間関係の難しさなど暗い部分も丹念に描写され、非常にリアルに感じました。特に最終話の安く入居できる共同住宅に住む権利を人々が争う話は、とても世知辛く感じました。みんな大変なのは一緒でもそこに住んでいた年寄りを強引に追い出そうという展開に何とも暗い気持ちを覚えます。最終話なのに・・・と寂しく思っていたら、はっきりとした決着はつけないまでも希望を感じさせる終わり方で安心しました。
by chirimendonnya
| 2005-10-16 19:56
| 小説