コメント、トラックバックについては承認制を取らせていただきます。


by chirimendonnya
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

『完全演技者(トータルパフォーマー)』山之口 洋   角川書店

あらすじ:
舞台は80年代。大学生の修は歌に自信ありの音楽好き。音楽についての価値観が会う人間とはなかなか巡り会えず、いくつかのバンドに入ってはやめの繰り返し。そんなある日、バイト先の中古レコードでなんともいえなく魅力的な声を持つボーカルと出会う。その名はクラウス・ネモ。いてもたってもいられなくなった修は彼に会うため、一路アメリカに向かうが・・・。

最初は主人公の修がガールフレンド沙羅にあてた手紙から始まります。憧れのバンドの一員となった喜びのあふれる能天気な手紙。あまりの無邪気さにちょっと気恥ずかしくなるくらいのこの文章、本を読み終わってから読むとまた別の感想を持ちました。

修は楽天家でちょっと自信過剰。最初バンドを組んで色々やっていることから、これは一人の夢多き青年のサクセスストーリーなのかなと思ったのと展開だ少しだるく感じたのとで、ちょっと期待はずれに感じました。

ところが、修がアメリカにたどり着き、何とか憧れのクラウス・ネモと出会ったあたりから途端にスリルとサスペンスあふれるストーリーになり、一気に読み終わりました。素顔を決して人には見せないネモをはじめ、バンドメンバーはもちろん何かと彼らの手助けをするモグリの医師に至るまで怪しげで、まず彼らの正体が気になります。そして、バンドと彼らについての特ダネをモノにしようとする胡散臭い音楽ライターとの駆け引きの行方に目が離せません。こんなのアリ?と思うような強引すぎる箇所もあるけれど、スリリングな展開にそんなのいちいち構っていられません。特に後半はキーとなるものについての登場人物たちの認識(そんなわけないよと思ってから舞台が80年代だったことを思い出し、納得しました)、エログロ満載の描写にちょっと引き気味ながらページをめくるスピードはますます上がっていきました。

結末にはちょっと納得できないんだけど、何かを極めるということはここまで何かを犠牲にしなければいけないんだろうかとも思いました。最後の場面を読んでから、冒頭の手紙を読むとなんともいえない物悲しさを感じます。
[PR]
by chirimendonnya | 2005-11-27 19:57 | 小説