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by chirimendonnya
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『女教皇ヨハンナ』上下  ドナ・W・クロス   草思社

あらすじ:
 9世紀ドイツ。小さな村で一人の少女が生まれる。”ヨハンナ”と名付けられた彼女は、女の子なのに勉強好きな変わった女の子。兄のマティアスはそんな妹を理解し色々なことを教えてくれるが、病気で幼くして亡くなってしまう。聡明な彼女を認め、学問を授けてくれる学者もいたが、堅物の父は娘を受け入れることができない。そんなある日、彼女にビッグチャンスが・・・。以前の師のつてで遠くの学校で勉強できることになったのだ。
 学校でただ一人の女に子として嫌がらせを受けることもあったが、良き理解者にも恵まれ、楽しく過ごすヨハンナ。しかし、そんな日々も他族の侵攻で終わりを告げる。激しい攻撃で村はほぼ全滅。彼女もほおに傷を受ける。
 だが、これは人生最大のチャンスでもあった。死んだ兄の服を身につけ、男として生きる決心をしたヨハンナ。正体がばれる不安に常に支配されながらも才能に恵まれた彼女は、次々と功績をあげ、名を成す。


この本を知ったのは新聞広告。『公式記録から消された女教皇。しかし、彼女は確かに実在した!』というような内容の何となくおどろおどろしくショッキングな宣伝文句。トンデモ本か?と思いましたが、ちょっと興味を持ちました。そんな折、図書館で上下2巻そろっているのを発見。借りてきました。

読み始めてみると別に怪しげな話ではなく、オーソドックスといってもいいような女性のサクセスストーリーで、大変面白く読むことができました。上下で600ページを超える長さも全く苦になりません。ヨハンナの40年あまりの生涯は文字通り波乱の連続で次が気になって仕方ありませんでした。

中世はRPGの基本設定のネタ元になることが多く、憧れる人も多いと思います。その一方で実際は「とんでもなく不潔だった」「迷信深い混乱した時代」といわれることもあります。この本はヒロインのヨハンナとその良き理解者であるゲロルトの人物像こそ現代的な雰囲気ですが、人々の暮らしや発想などは非常によく調べられ当時に忠実に描かれています。ということは・・・。今まで読んだことのある中世を舞台にした作品の中である意味読んでいて一番辛く感じました。学問好きの女性は変人扱い、悪くすれば魔女扱いされて処刑。さらに夫が妻を殴るのは当たり前。特にヨハンナの父の横暴ぶりは度を超えていて腹が立ちました。さんざん妻に暴力をふるい全てを否定しておいて、実は大変愛していたように語られても・・・。ヨハンナも割り切れない思いであ然としていたけど、私も呆然としました。いくら昔のこととはいえ、単なる身勝手な人にしか思えませんでした。父以外も性別問わず本当に女性に否定的。一見無謀に見える男装も思わず納得してしまうのはいいのか悪いのか・・・。

前半結構イライラした分、男装したヨハンナが才能を開花させてどんどん出世するのは気持ちいいです。医術をマスターした彼女のアイディアに感心し、貧しい人に尽くす心がけに胸を打たれました。医術というのは絶対他人の役に立つし、特に当時だと人によって技量のばらつきが大きかったと思うので、掟破りとも思える出世ぶりにも何だか納得してしまいます。

良き理解者ゲロルトとのロマンスも話を盛り上げていました。彼は顔良し性格良し腕も立つと3拍子そろった素敵な男性で、ヨハンナが惹かれるのもわかるし、二人の場面は結構どきどきしました。二人が気持ちを通じ合わせた後は、話がつまらなく感じてしまったほどです。ただ、ちょっと都合が良すぎるのが何だか気になりました。この作品の他の男性と比べてやけに理解があるのが、時々しらける原因となってしまいました。何かしら欠点があったり、当時の人らしい発想があった方がかえって良かった気がしました。
by chirimendonnya | 2005-12-25 17:30 | 小説