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by chirimendonnya
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『少年と少女のポルカ』藤野 千夜      ベネッセ

表題作『少年と少女のポルカ』、『午後の時間割』の2編収録です。
表紙絵は漫画家の岡崎京子が担当。本の内容にあっていて良いと思いました。講談社から文庫版が出ていますが、単行本とはうってかわって地味で無難な表紙になってしまって残念。この本に限らず、文庫化するときに無難な装幀になってしまうのは残念です。


『少年と少女のポルカ』
なにやら楽しそうな題名だけど、内容は同級生(男)に恋する男子高校生、女になりたい男子高校生、電車に乗るのが怖い女子高生の日常の積み重ねです。どの子もあんまりそこらにいそうにないタイプではありますが、その変わっている点をことさら強調することなく、さらっと自然に描かれています。
 三人の中でダントツで明るいのが女になりたい男子高校生ヤマダ。あくまで自らの願望に忠実に突き進む姿は痛快ですらあります。ヤマダの悩みも彼女?なりにはあるようですが、すでにそんなことは突き抜けてしまっているようであくまでポジティブ。うらやましくなってしまうくらいです。
 それに比べると明るいゲイを目指しているトシヒコの恋心や行動は密やかな感じがします。性格的にもどちらかというとぶっきらぼう。でも、電車に乗れなくなってしまった幼なじみミカコのリハビリにつきあってやったりして結構優しいようです。素っ気ないようで執念深い彼、この先どんな人生を歩むのでしょうか。
 さて、電車に乗れなくなってしまった女の子ミカコ。作中では一生懸命だし、結構明るい子に描かれています。何となく応援したくなってしまう子です。個人的には彼女に一番共感しました。
 日常の積み重ねに終始する話ではありますが、ちゃんと盛り上がりもオチもあり、爽やかな高揚感も感じました。ただ、トリオの一人に対しての結末は非常に苦くその人物の幸せを祈らずにはいられません。


『午後の時間割』
最初っからいきなり主人公の浪人生(高校を卒業仕立ての女の子)が「64歳になろうと決意した」という人を食った文章で始まります。といっても全然SFでもなんでもありません。始まってしばらくはグータラ浪人生のだらだらした日常です。64歳になるっていったって意味ないじゃん、と思って読み進んでいきましたが、ひょんなきっかけで高校時代の同級生(結構いい感じ)とつきあうことになります。そして、最後は何ともいえない切ない感じで終わります。結局18歳が64歳みたいに物事を達観するのは無理だった、ということなんでしょうね。


二作とも読んでいてすごく優しい感じのする作品でした。著者の人柄が現れているような感じがします。
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by chirimendonnya | 2006-10-14 19:59 | 小説