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by chirimendonnya
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『バーティミアスⅢプトレマイオスの門』ジョナサン・ストラウド  理論社 

あらすじ:
 ジョン・マンドレイクことナサニエルは17歳にして、遂に情報大臣にまで上り詰めた。黒いスーツでばっちり決めて女性からの視線も熱い。一方、ナサニエルに召還されているジン・バーティミアスは二年間こきつかわれ、体はぼろぼろ、愚痴はタラタラ。
 首相の信任も厚いナサニエルだが、バーティミアスを使ったある事件をきっかけに足下が揺らぎ始める。何とか窮地を脱しようとするが・・・。


3部作の最終作。後書きから本を読む方、是非最初に訳者あとがきを読んでください。そしてうんと期待して読んでください。決して期待を裏切らないラストが待っています。あまりの絶賛ぶりにかえって怪しんでしまいましたが、その言葉にも納得がいく最後です。大風呂敷を広げながら進む物語は特に最近多いですが、その中でも綺麗に終わっている部類に入ると思います。やや物悲しいけれども、余韻のある素敵なラストです。もちろんラストだけでなく、話も3作の中で一番面白いです。設定、ストーリー共にかなり凝っていて630ページあっても退屈しません。

SF的な要素も取り入れながらすすみ、下手すると読者は置いてきぼりを食らうか、馬鹿馬鹿しく思ってしまいますが、妙な説得力があり、不自然に感じることはありませんでした。奇想天外の不思議を映像で見てみたい気がします。

設定、話だけでなく主人公ナサニエルの成長ぶりも見所の一つです。これまでは単なる性格の悪い奴としか思っていなかったし、本人の思っているとおりに出世してきたこともあって全く共感できませんでした。それが政治上の立場でも人間関係でも窮地に立たされ、迷い、弱さが出てきます。彼が自分の得てきたものの代わりに失ったものの大きさを実感する場面ではちょっと涙が出そうになりました。そうした感情を体験することにより、こまっしゃくれた子供から立派な青年に成長する過程が見事です。それがなかったら、最後の感動も半減していたことでしょう。

縦21センチ横15センチ、おまけに全部で638ページ。通勤中の電車で読んでいたので、毎日何だか筋トレしているような気分でしたが、それだけの価値はありました。
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by chirimendonnya | 2006-10-23 20:46 | ファンタジー