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by chirimendonnya
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カテゴリ:小説( 49 )

あらすじ:
ウクライナの大統領セルゲイ・ブーニン。心臓移植を受けた彼はいまだ混乱する国内に、自分の心臓をきっかけに現れた女性に、困惑しっぱなし。青年時代、力のみなぎっていた十年前、そして現在と三つの時代を行き来しながらストーリーは進む。

600ページを超える非常に厚い本。ソフトカバーのせいか持ち歩きにもそんなに苦労しませんでした。

(1)現在のセルゲイ・ブーニン(2015年)貫禄の付いたややせっかちなおじさん
(2)10年ほど前の彼(2002年~)    社会的には重要な地位にある。ちょっと優柔不断。
(3)少年~青年時代の彼(1980年代) ほぼ女の子のことしか頭にないちゃらんぽらんな若者
で構成されていて、3つの物語が入れ替わり展開されます。それぞれが面白いこともあって全然飽きませんでした。

(3)段階の最初の彼は本当に情けなく、定職はないし、女の子を追っかけ回してばっかりいるし、どうしてこれが大統領になるのかと非常に謎です。色々な人との出会いを通して成長していき、最後には明るい未来を予感させます。ちゃらんぽらんではあるけど、結構優しいところがあり、好感が持てます。

(2)段階。20年の間に彼に一体何があったのでしょうか。いきなり政府の高官です。本人と妻の出会いから別れ、そして秘書との微妙な関係が話の軸。主人公とその秘書は「ラブ・アクチュアリー」のヒュー・グラントとマルティン・マカッチョンをイメージして読みました。何となく似てます。何も不倫していたわけではなく、妻とはちゃんと愛し合っていて本当に幸せそうです。それだけに最後が悲しい。誰も非難できない気がして、やるせなかったです。

(1)段階。押しも押されぬ立派な大統領です。政治をめぐる陰謀が関わっているので、話は一番複雑。混乱する国内情勢に苦慮しながらもちゃっかり恋愛したりしてますが、最後に思いもかけないひねりが・・。

三つの話はほとんど関係なく進みながらも話の所々ではつながり、そして最後には鮮やかにリンクします。かなり意外ではあったけど、いい方に期待を裏切られました。エピローグはやや不気味ながらも、基本的には幸せな終わり方で、かなり満足しました。
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by chirimendonnya | 2006-11-19 16:45 | 小説
あらすじ:
大学時代のアメフト仲間との同窓会帰り、広瀬哲朗はかつての女子マネージャー美月と再会する。ただならぬ様子の彼女を自宅に呼んで話を聞くと、その声は男性のものだった。「自分の心はずっと男だった」という美月。しかも、人を殺してきたという。困惑しながらも妻・理沙子と共に彼女を匿おうとする。
 警察から、そして小さなきっかけから事件に関わることになった元チームメイトの新聞記者・早田から逃げ切ることができるのか?


主な登場人物の一人、美月が性同一障害だということが、刊行当時にかなり話題になりました。
特に中盤までは非常に真面目に取り扱われています。
戸惑う主人公と共に性同一障害、および性別の問題についてかなり考えました。
どれが正解ということもないだろうけど、途中で出てくる半陰陽の女子高生とオナベバーのオーナーの考え方が個人的には好きです。男はこう、女はこうと決めつけすぎると苦しいし、無理があると思うので。

この小説の柱になっているのは性同一障害だけではなく、他にも夫婦問題、友人でもある新聞記者との駆け引き、警察との駆け引き、そして友情と非常に多彩です。それこそ、それぞれで本1冊になりそうなくらい面白い要素で成り立っています。それだけに序盤はいいんだけど、話が進むにつれて苦しくなってくる印象があります。伏線はしっかり回収していると思うんだけど、やや強引か?というものもありました。特に最終盤のウルトラCの連発はどうかと思いました。あれでは誰も本当の意味では救われないし、あんなに大事に扱ってきたテーマも結果的には冒涜しているような気さえしました。何だか残念です。それでも、エピローグを読むと長く続く友情っていいなあ、と感じました。

個人的に考えさせられたのが主人公・哲朗と妻・理沙子の夫婦関係。理沙子は話の最初から、哲朗も話が進むにつれてかなり我の強い性格だというのがわかります。お互いの仕事も仕事だし、夫婦って互いが譲り合わないとうまくいかないな、と思いました。どちらにも原因はあるけど、特に理沙子の方には人が触れられたくないところに土足で踏み込むような無神経さがあり、そこを直さないと、最初はいいんだけど何度も同じ失敗を繰り返しそうです。この作品に出てくる夫婦はみなどちらかの身勝手で関係が壊れているし、本当に難しいものです。
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by chirimendonnya | 2006-11-12 20:03 | 小説
あらすじ:
平凡な専業主婦チエミ。職場の先輩だった白川さん宅でのホームパーティに参加したこと、彼女からサッカーW杯のチケットをもらったことをきっかけに日常にほんの少しずつ変化が生まれる。チエミはホームパーティで知り合った同年代の男性と、熱狂的なサッカーファンの夫はW杯会場で知り合った若い女の子と微妙な関係になるかもしれない・・・。


この作品でのW杯は今年のものではなく4年前の日韓大会です。

主人公のチエミのバックグラウンドについては結構詳しく書かれています。女子大に通い、何となく居心地のいい職場に勤めたけど「そろそろ子供を」という周囲の声と当時若干体の不調があって退職したこと。今思い出すとちょっと恥ずかしい恋を学生時代にしたこと。そうとはっきり書かれてはいないけど、性格はどちらかといえば物静か、まあまあ気の利く社交性のあるタイプです。見た目も小綺麗にしている平均的な30代女性であろうことが何となくうかがえます。明るくのんきな高校教師の夫、元気な姑の描写も相まって本当にどこにでもいそうな女性です。

それがこの題名と揺れる心情の描写で、もしかしてドラマのヒロインみたいに・・・と読み手を期待させる作品です。そして、こちらが「よし、いよいと」と思うと斜めにそれていってしまうストーリーです。最後には「そう来たか」とちょっと脱力してしまいました。でも、平凡な人の平凡な日常にもそれなりのドラマはあるよな、と改めて感じ、妙にすがすがしい気持ちになりました。
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by chirimendonnya | 2006-10-29 19:10 | 小説
表題作『少年と少女のポルカ』、『午後の時間割』の2編収録です。
表紙絵は漫画家の岡崎京子が担当。本の内容にあっていて良いと思いました。講談社から文庫版が出ていますが、単行本とはうってかわって地味で無難な表紙になってしまって残念。この本に限らず、文庫化するときに無難な装幀になってしまうのは残念です。


『少年と少女のポルカ』
なにやら楽しそうな題名だけど、内容は同級生(男)に恋する男子高校生、女になりたい男子高校生、電車に乗るのが怖い女子高生の日常の積み重ねです。どの子もあんまりそこらにいそうにないタイプではありますが、その変わっている点をことさら強調することなく、さらっと自然に描かれています。
 三人の中でダントツで明るいのが女になりたい男子高校生ヤマダ。あくまで自らの願望に忠実に突き進む姿は痛快ですらあります。ヤマダの悩みも彼女?なりにはあるようですが、すでにそんなことは突き抜けてしまっているようであくまでポジティブ。うらやましくなってしまうくらいです。
 それに比べると明るいゲイを目指しているトシヒコの恋心や行動は密やかな感じがします。性格的にもどちらかというとぶっきらぼう。でも、電車に乗れなくなってしまった幼なじみミカコのリハビリにつきあってやったりして結構優しいようです。素っ気ないようで執念深い彼、この先どんな人生を歩むのでしょうか。
 さて、電車に乗れなくなってしまった女の子ミカコ。作中では一生懸命だし、結構明るい子に描かれています。何となく応援したくなってしまう子です。個人的には彼女に一番共感しました。
 日常の積み重ねに終始する話ではありますが、ちゃんと盛り上がりもオチもあり、爽やかな高揚感も感じました。ただ、トリオの一人に対しての結末は非常に苦くその人物の幸せを祈らずにはいられません。


『午後の時間割』
最初っからいきなり主人公の浪人生(高校を卒業仕立ての女の子)が「64歳になろうと決意した」という人を食った文章で始まります。といっても全然SFでもなんでもありません。始まってしばらくはグータラ浪人生のだらだらした日常です。64歳になるっていったって意味ないじゃん、と思って読み進んでいきましたが、ひょんなきっかけで高校時代の同級生(結構いい感じ)とつきあうことになります。そして、最後は何ともいえない切ない感じで終わります。結局18歳が64歳みたいに物事を達観するのは無理だった、ということなんでしょうね。


二作とも読んでいてすごく優しい感じのする作品でした。著者の人柄が現れているような感じがします。
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by chirimendonnya | 2006-10-14 19:59 | 小説
あらすじ:
かつて織田信長の右筆を務めた太田牛一。「本能寺の変」後に秀吉に仕え、年老いた今は大坂で隠居生活を送っている。今も敬愛する信長の伝記を3部作にして書き上げるつもりであったが、自分が側近で仕えていた時代以外のものは資料がなかなかそろわず、思うように進まない。あの「本能寺の変」前後のこともなかなかわからないのだ。それでも、旅などを通して少しずつ核心に近づいていくが・・・。


少し前に小泉前首相の愛読書として話題になった本、といえば思い出す方も多いかもしれません。首相の任期が切れたから、というわけでもないだろうけど、図書館で発見したので借りてきました。歴史物はわりと好きなので。

よく調べられていることは確かですが、明らかに無理が感じられる部分もいくつかあり、どこまで嘘でどこまで創作なのかわからない部分があります。まあ、日本史の中でもよく知られている時代なのですべて本当だと信じる人もいないと思いますが・・・。

主人公であり、狂言回しでもある太田牛一はやや皮肉屋ですが、冷静、それでいてなかなか人情のある人物に描かれています。すごく魅力があるわけではないけど、謎を探る役回りには適任に思いました。その他の登場人物は、そんなに魅力的とも思わないかわりにあまりいやな感じもしません。

強いていえば主人公の後半生の主君でもある秀吉は非常にいやな人物になっているのはちょっと気になります。この作品に限らず、秀吉をいやな男に仕立てるのは最近良くあることなので、一つのトレンドなのかもしれません。でも、あそこまでの未曾有の大出世を遂げた人物。もう少し良く書いても、と思います。ただ、「本能寺の変」後、同じ立場の者や格上の者を次々追い抜いていってしまった秀吉に対する元同僚の視線はあんなもんかもしれません。そういう意味では非常に説得力のある造形です。それにあれだけいやな男に書かれていても魅力的に感じる部分があるのはさすがです。

登場人物の魅力よりは「次が気になる、早く読みたい」と思わせる語りのうまさ、引きの強さがポイントの小説です。虚実ない交ぜの部分があるとはいえ、次々と明かされる謎、だましだまされの駆け引き、人間関係など読んでいて飽きることはありませんでした。
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by chirimendonnya | 2006-10-08 20:04 | 小説
あらすじ:
昭和初期。平凡な青年・辰弥のもとに降ってわいたように自分が実は地方の名家の一族だという話が出た。仲介役の弁護士の家で祖父と会うことになったが、その席上でその老人が急死。辰弥の亡父というのが、20数年前に何人もの村人を殺害した人物であり、故郷に着いた彼も周囲の人から奇異な目で見られる。さらに村で奇怪な事件が続々発生し始めると・・・。


何度も映画やドラマになっている有名な作品なので、”八つ墓村”と言う何ともいえない村名の由来、そして本を読んでなくても恐るべき殺人魔の懐中電灯2本を鉢巻きで頭にくくりつけた何ともいえない風体は知っている人が多いと思います。私もドラマで大体の筋は知っていたのですが、読むのはこれが初めてです。

読んでまずびっくりしたのが辰弥の一人称で話が進むこと。当然、話の進行は彼の視点になり、映画やドラマでは主役の名探偵・金田一耕助はあまり出てきません。金田一が色々考えをめぐらせる場面が少なく、いきなり出てきてちょこちょこ何かしゃべっていく印象です。何より登場人物の大半が探偵を上回る強烈な個性の持ち主なので、あまり目立たない感じです。推理がどうこうというよりも愛憎渦巻く人間ドラマという感じがしました。

読んでみると、女性の登場人物が割と魅力的です。運命の美女みたいに登場してくる美也子よりも辰弥の姉・春代と親戚の娘・典子が好きです。確かに見た目は冴えないけどとても心の優しい春代。最初は確かにちょっと不気味な感じだけど、話が進めば進むほど気柄の良さみたいなのが感じられ、だから余計に最後は泣けます。そして典子。「月足らずで生まれたせいか、ちょっと足りない娘」だったのが、段々活動的になっていき、終盤では大活躍します。間違いなくキーパーソンの一人だと思うし、個人的にはのんきで楽天家な所が好きです。決して”足りない”のではなく、のんびりであまり気が付かないだけなんだと思うけど。

人がどんどん死んでいき、犯人の手がかりが全く使えない中、よそ者で因縁の一族の一員である辰弥に村中の疑惑が集中して遂に・・・という終盤は、迫力・説得力共に十分です。理由・場所はともかくいくつかの疑わしい状況証拠があれば犯人にされてしまいかねない、というのは今でも十分起こりうる状況で集団ヒステリーの怖さみたいなのはよく出ています。手に汗握りつつ読んでしまいました。最後は事件が解決して晴れ晴れというよりは切ない余韻を残しつつのハッピーエンド。じーんと来ました。
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by chirimendonnya | 2006-05-27 20:47 | 小説
映画もドラマも見ていない私でもあらすじを知っているくらいの大ヒット作品。図書館で見かけたので、借りてみました。「高校生の時に恋人が白血病で亡くなった男性」が過去を回想するというこの話、評判通り「泣ける」のか興味がありました。

泣けるかどうかという結論から言うと泣けませんでした。

いくらでも盛り上げられそうな筋なのに非常に淡々とストーリーが進む上、主人公の朔太郎がこれまた淡泊でひねた性格。ヒロインのアキに至ってはあまりに現実感がなさ過ぎて全くいいとは思えませんでした。サクと彼の祖父との場面はそれでも面白かったけど、他は「あ、そう」という感じでなかなか気分が盛り上がりません。

例の有名なサクがアキを病院から連れ出してオーストラリアに行こうとする場面に至っては・・・。さーっとより気持ちが冷めていくのを感じました。気持ちはわからないでもないけど、お見舞いするのにもガウン・キャップ着用の病人を連れ出すのはいくら何でも無茶すぎます。もっと登場人物に感情移入していればもっと違う感想だったかもしれませんが、それができませんでした。

最後、思ったよりも前向きな印象で話が終わるので、読後感は悪くないけど、正直期待はずれな印象でした。読む前におおかたの話を知っていたから悪かったのか、それとも主人公達より少し年を取っているからなのかはわかりません。高校生の時に読んでいればもう少しいいと思えたかも。一つだけ映画版のサクが森山未来なのは納得しました。
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by chirimendonnya | 2006-01-08 22:12 | 小説
あらすじ:
 9世紀ドイツ。小さな村で一人の少女が生まれる。”ヨハンナ”と名付けられた彼女は、女の子なのに勉強好きな変わった女の子。兄のマティアスはそんな妹を理解し色々なことを教えてくれるが、病気で幼くして亡くなってしまう。聡明な彼女を認め、学問を授けてくれる学者もいたが、堅物の父は娘を受け入れることができない。そんなある日、彼女にビッグチャンスが・・・。以前の師のつてで遠くの学校で勉強できることになったのだ。
 学校でただ一人の女に子として嫌がらせを受けることもあったが、良き理解者にも恵まれ、楽しく過ごすヨハンナ。しかし、そんな日々も他族の侵攻で終わりを告げる。激しい攻撃で村はほぼ全滅。彼女もほおに傷を受ける。
 だが、これは人生最大のチャンスでもあった。死んだ兄の服を身につけ、男として生きる決心をしたヨハンナ。正体がばれる不安に常に支配されながらも才能に恵まれた彼女は、次々と功績をあげ、名を成す。


この本を知ったのは新聞広告。『公式記録から消された女教皇。しかし、彼女は確かに実在した!』というような内容の何となくおどろおどろしくショッキングな宣伝文句。トンデモ本か?と思いましたが、ちょっと興味を持ちました。そんな折、図書館で上下2巻そろっているのを発見。借りてきました。

読み始めてみると別に怪しげな話ではなく、オーソドックスといってもいいような女性のサクセスストーリーで、大変面白く読むことができました。上下で600ページを超える長さも全く苦になりません。ヨハンナの40年あまりの生涯は文字通り波乱の連続で次が気になって仕方ありませんでした。

中世はRPGの基本設定のネタ元になることが多く、憧れる人も多いと思います。その一方で実際は「とんでもなく不潔だった」「迷信深い混乱した時代」といわれることもあります。この本はヒロインのヨハンナとその良き理解者であるゲロルトの人物像こそ現代的な雰囲気ですが、人々の暮らしや発想などは非常によく調べられ当時に忠実に描かれています。ということは・・・。今まで読んだことのある中世を舞台にした作品の中である意味読んでいて一番辛く感じました。学問好きの女性は変人扱い、悪くすれば魔女扱いされて処刑。さらに夫が妻を殴るのは当たり前。特にヨハンナの父の横暴ぶりは度を超えていて腹が立ちました。さんざん妻に暴力をふるい全てを否定しておいて、実は大変愛していたように語られても・・・。ヨハンナも割り切れない思いであ然としていたけど、私も呆然としました。いくら昔のこととはいえ、単なる身勝手な人にしか思えませんでした。父以外も性別問わず本当に女性に否定的。一見無謀に見える男装も思わず納得してしまうのはいいのか悪いのか・・・。

前半結構イライラした分、男装したヨハンナが才能を開花させてどんどん出世するのは気持ちいいです。医術をマスターした彼女のアイディアに感心し、貧しい人に尽くす心がけに胸を打たれました。医術というのは絶対他人の役に立つし、特に当時だと人によって技量のばらつきが大きかったと思うので、掟破りとも思える出世ぶりにも何だか納得してしまいます。

良き理解者ゲロルトとのロマンスも話を盛り上げていました。彼は顔良し性格良し腕も立つと3拍子そろった素敵な男性で、ヨハンナが惹かれるのもわかるし、二人の場面は結構どきどきしました。二人が気持ちを通じ合わせた後は、話がつまらなく感じてしまったほどです。ただ、ちょっと都合が良すぎるのが何だか気になりました。この作品の他の男性と比べてやけに理解があるのが、時々しらける原因となってしまいました。何かしら欠点があったり、当時の人らしい発想があった方がかえって良かった気がしました。
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by chirimendonnya | 2005-12-25 17:30 | 小説
あらすじ:
ある一人の魅力的な女性が亡くなった。彼女の名はモリー。特に親しかった男友達、作曲家のクライブと新聞編集長のヴァーノンは追憶に浸りながらもそれぞれの次の仕事に取りかかる。クライブは新たな交響曲の作曲に、ヴァーノンはある特ダネをめぐって動き出す。もともと成功者であるこの二人、それぞれさらなる成功を手にするはずだったが・・・。


読み終わって検索をかけてみたら気がつきましたが、本文で言及されてないことまで書いてあるレビューがあってびっくりしました。また、訳者後書きもかなりないように踏み込んでいるので、必ず読後に読むことをお勧めします。主人公達の年齢、モリーの死因など本筋にはそんなに関係なくても読みながら想像するのが結構楽しかったので、変に色々調べないで読む方がいいと思います。変なフィルターがかかってあまり作品を楽しめなくなる様な気がします。

モリーが亡くなったことでこれまで親友だった二人の男性の関係が微妙に狂う過程が面白いです。ある重要な約束をするほどに深い信頼関係に結ばれていたはずなのに、一つの要素が欠けただけでこんなにもお互いへの見方が変わるというか、欠点が見え始めるというか・・・。永遠に変化しないということはなかなか難しいもんです。

ストーリーは二人の仕事がノって行くにつれて最後のちょっと手前までは読み手の私もノって読めました。ただ、その最後が何だか置いて行かれたような気がして・・・。解決法が好きではないこともあるし、それまで現実感があった話が急に現実離れしてしまったような気がしていまいちでした。
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by chirimendonnya | 2005-12-11 20:05 | 小説
あらすじ:
舞台は80年代。大学生の修は歌に自信ありの音楽好き。音楽についての価値観が会う人間とはなかなか巡り会えず、いくつかのバンドに入ってはやめの繰り返し。そんなある日、バイト先の中古レコードでなんともいえなく魅力的な声を持つボーカルと出会う。その名はクラウス・ネモ。いてもたってもいられなくなった修は彼に会うため、一路アメリカに向かうが・・・。

最初は主人公の修がガールフレンド沙羅にあてた手紙から始まります。憧れのバンドの一員となった喜びのあふれる能天気な手紙。あまりの無邪気さにちょっと気恥ずかしくなるくらいのこの文章、本を読み終わってから読むとまた別の感想を持ちました。

修は楽天家でちょっと自信過剰。最初バンドを組んで色々やっていることから、これは一人の夢多き青年のサクセスストーリーなのかなと思ったのと展開だ少しだるく感じたのとで、ちょっと期待はずれに感じました。

ところが、修がアメリカにたどり着き、何とか憧れのクラウス・ネモと出会ったあたりから途端にスリルとサスペンスあふれるストーリーになり、一気に読み終わりました。素顔を決して人には見せないネモをはじめ、バンドメンバーはもちろん何かと彼らの手助けをするモグリの医師に至るまで怪しげで、まず彼らの正体が気になります。そして、バンドと彼らについての特ダネをモノにしようとする胡散臭い音楽ライターとの駆け引きの行方に目が離せません。こんなのアリ?と思うような強引すぎる箇所もあるけれど、スリリングな展開にそんなのいちいち構っていられません。特に後半はキーとなるものについての登場人物たちの認識(そんなわけないよと思ってから舞台が80年代だったことを思い出し、納得しました)、エログロ満載の描写にちょっと引き気味ながらページをめくるスピードはますます上がっていきました。

結末にはちょっと納得できないんだけど、何かを極めるということはここまで何かを犠牲にしなければいけないんだろうかとも思いました。最後の場面を読んでから、冒頭の手紙を読むとなんともいえない物悲しさを感じます。
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by chirimendonnya | 2005-11-27 19:57 | 小説