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by chirimendonnya
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『フェッセンデンの宇宙』エドモンド・ハミルトン  河出書房出版社(1)

なかなか読み応えのある短編集を読んだので、二日に分けて感想を書きます。

10ページから100ページまでの間の色々な長さの短編が9編収められたSF短編集。ほとんどはラストがほろ苦い作品です。微妙に悪意を感じたり、ウィットに富んでいたり、読後感は色々。実は短編集はどちらかというと苦手で、家に帰ってから「しまった」と思いましたが、読み応えのある作品が多く、読んで良かったと思いました。

フェッセンデンの宇宙:
SFの古典的短編。友人フェッセンデンの家でブラッドリーが見たものは?
わずか20ページあまりで宇宙へのときめきや命のきらめき、人間の傲慢を余すところなく伝えます。表題作となっているだけあって一番面白いと思います。

風の子供:
探検家ブレントは“風の高原”と呼ばれる奥地である少女と出会う。すっかり彼女に魅せられた彼は彼女を故国へ連れ帰ろうとするが・・・。
 この本の中で唯一はっきりとハッピーエンドといえる作品。自然の優しさが感じられる幕切れはぐっと来ます。

向こうはどんなところだい?:
火星探検から帰ってきた男。探検隊は彼を残して壊滅。世間のショックを軽減させるため、隊員の死因については実際とは違う説明がされている。内心では大きな感慨にふけっていても、唯一の生き残りの彼は遺族に家族の最後を聞かれるが、余り詳しくは語れない。
 真実は発表よりずっと残酷。建前と本音の対比が面白い作品です。

帰ってきた男:
死亡したと勘違いされかねない発作がきっかけで生きたまま葬られた男。生前からこの状態に陥ることをおそれていた彼は埋葬方法を指定。そのおかげで再び生の世界に舞い戻ったわけだが・・・。
 とびきりブラックな一編。あまりの状況に主人公に同情しました。あの成り行きではそうするしかないというオチになりますが、読み手にとっては複雑な気持ちです。展開次第ではとびきりハッピーにすることもできそうな設定なだけに、余計気の毒でした。
by chirimendonnya | 2005-07-02 20:41 | 小説